『忍姫恋絵巻』
「…っ、家光………」
気を失ってるのか、返事が無い。
お願い、無事でいて!!
流れる涙も拭わずに、家光の縄を解き、抱きしめた。
「家光、家光!!目を覚まして、お願いっ!!」
もう……失いたくない。
消えないで、でなきゃあたしは、本当に壊れてしまう。
「家光様ぁっ!!」
泣き叫びながら、家光の名前を呼んだ。
「何事だ」
すると、後ろから凜とした男性の声がした。
振り向くと、春日局様が立っていた。
「………なんで……」
才氷は家光をだき抱え、立ち上がる。
「なんで家光にあたしを付けなかった?」
春日局様を泣きながら睨み付ける。
分かってる…あたしが悪かった。
何を言われたって、家光の傍にいるべきだった。