『忍姫恋絵巻』
なにも変わってない自分に苛立つ。
それを、春日局様に、八つ当たってるだけ。
「敵を特定する為にお前達を家光から遠ざけた。だが、結果家光様を傷つけた事は、すまなかったな」
春日局様は頭を下げた。
プライドの高い春日局様が、頭を下げた?
それに、あたしは驚く。
「私が至らなかった。だから、お前が悪いわけではない」
「春日局様……」
そらはまるで、あたしに自分を責めるなと、言っているように聞こえた。
「家光……」
才氷は家光の口に耳を近づけた。
息はある。
良かった……本当に、良かった。