『忍姫恋絵巻』
「家光様を医者へ」
春日局様は、お付きにそう指示を出して着物を翻す。
「赤」
「はいはいー」
春日局様の一言で、そこには赤が現れた。
「刺客がどこの手の者か、分かったな?」
「もちろんですよ」
「片付けろ」
春日局様の言葉に、赤はあたしに視線を向けた。
その目はが心配そうにあたしを見たようにみえたのは、勘違いだろうか。
「承知」
その真意は分からないまま、すぐに、赤は姿を消した。
「お前は家光と一緒に城へ戻れ」
春日局様はそう言って、歩いていってしまう。
でも、その言葉に甘える事にした。
今は、家光の傍にいたい。
「家光……恐い思いをさせてごめん」
おうじさまになれなくてごめん。
守れなくてごめん。
謝る言葉しか見つからなくて、胸が苦しくなった。