『忍姫恋絵巻』
「それは違う…よ…」
握っていた手を握り返される。
驚いて、家光を見つめた。
「家光…?」
すると、家光と目が合った。
「違う……才氷が悪いんじゃない…」
そう言って家光は優しく弱々しい笑みを浮かべた。
『…っ…君…が悪…いんじゃ…ないんだっ…』
「…っ!!」
あぁ……。
あの人とどこまでも、似ている。
言葉も…笑顔も…あの人とそっくりだ。
だからかな、家光を見た時から、守りたいって、守らなくちゃいけないってそう思った。
心が、どこまでも綺麗で、透き通る水のような人。
忍びとして、血にぬれた世界にいたあたしには、それが誰よりも綺麗に見えて、強く惹かれる。
一緒にいると、自分まで澄んでいくように思えたから。