『忍姫恋絵巻』


「それは違う…よ…」


握っていた手を握り返される。
驚いて、家光を見つめた。


「家光…?」


すると、家光と目が合った。



「違う……才氷が悪いんじゃない…」


そう言って家光は優しく弱々しい笑みを浮かべた。


『…っ…君…が悪…いんじゃ…ないんだっ…』

「…っ!!」


あぁ……。
あの人とどこまでも、似ている。


言葉も…笑顔も…あの人とそっくりだ。


だからかな、家光を見た時から、守りたいって、守らなくちゃいけないってそう思った。


心が、どこまでも綺麗で、透き通る水のような人。

忍びとして、血にぬれた世界にいたあたしには、それが誰よりも綺麗に見えて、強く惹かれる。


一緒にいると、自分まで澄んでいくように思えたから。





< 44 / 272 >

この作品をシェア

pagetop