『忍姫恋絵巻』
「あたしは……あの時…命よりも大事な誇りと心を失うところ
だったの……」
家光はあたしにギュッと抱き着く。
家光…。
手が震えてる…。
「辱しめられそうになって、その上命まで…。私は、改めて将軍になんて生まれなきゃ良かったって、思ったの!」
「家光様っ!!」
同い年の、同じ顔の女の子。
他人になんて思えなくて、同じなのに、あたし達は生まれも、背負う使命も違う。
あたしも家光を強く抱きしめた。
「恐かったの!!あたし……本当に…。でも、才氷がいてくれたから、私はここにいるんだよ!」
あたしにしがみつき家光は泣きつづけた。
その頭を優しく撫でて、髪をすいた。
この人を…守りたい。
まだ、主をもつ覚悟も出来てないはずなのに、その気持ちばかり大きくなってく。
「あたしは、主をもちません。今も、きっとこの先も…」
まだ、覚悟の無い中途半端なあたしで、いいのかな。
この、真っ直ぐに気持ちをぶつけてくれる人の傍にいて、本当にいいの?