『忍姫恋絵巻』
「どうして?」
「あたしは、主をもつ事が……恐いのだと、思います」
また失うのが怖くて、だから、等価に見合った働きをしたら、すぐに手をきってた。
「あたしは………」
あたしは、主を死なせてしまったから…。
そう言おうとして、言えなかった。
言葉にして、あの人が死んだ事を、認めたくなかった。
分かってても、まだ辛いんだ。
「もう、いいんだよ、才氷」
「え…」
何も言えないあたしに、家光は微笑んだ。
「才氷の過去がどんなモノでも、私は今の才氷が好きなんだもの。才氷がしたいようにしたら良いんだよ」
「っ!!」
家光は、幼そうに見えて、あたしの何倍も先を歩いてる。
本当に、人の気持ちに聡い子だ。