『忍姫恋絵巻』
③忍びの休日、花に込められた想いの巻
ある日の午後。
あたしは城下の豊穣祭に来ていた。
「おー、賑わってんなぁー」
「はぁ」
なんで、せっかくの休日に、赤と豊穣祭に来なきゃなんないの?
時は、遡る事、数刻。
春日局様の一言で、始まった。
「才氷、赤。豊穣祭に行ってこい」
赤と2人、何事かと顔を見合わせる。
「豊穣祭に行く目的はなに?」
それだけ言われても、「は?」ってなるから!!
相変わらず、説明足りないなぁ。
「何、お前達にも休息が必要だろう?」
「えー、絶対ただで休ませる気なんて無いですよねー??」
赤は疑いの眼差しで、春日局様を見た。
「ついでに、白木屋のみたらし団子を買ってこい」
「ええっ!?ただのおつかい!?」
団子買う為に、忍び使うとか!!
自分で買いに行ってよ!!
「家光様の護衛はどうするんです?」
赤の言う通りだ。
この間の事もあるし、家光を一人にしたくない。
「それは問題無い。家光様は、正室、側室候補達への定期挨拶の日、今日は私と大奥に出向く日だからな」
大奥……。
今代の女将軍になるまで、女の園だった大奥は、今や男の園で、家光の婿になる為に良家の婿候補達がいる場所。
「大奥では、こちら側の人間が何百といる。そこで、何かをしてくるような馬鹿はいないだろう」
「なるほどーって、本当に休息くれるって事ですか?」
赤は驚いたように春日局様を見つめる。