『忍姫恋絵巻』
「だから、そう言ってるだろう。ささっと行ってこい、時間は有限だからな」
そう言ってシッシと手であたし達を払う春日局様に、部屋を追い出された。
そんなこんなで、あたし達は今、城下の豊穣祭に来ている。
「なぁー、もう少しゆっくりしてこうぜ?」
「断る、団子買ったら帰る!」
あたしは、白木屋の団子屋まで、早足で向かう。
家光が大奥にいるからって、傍にいないと落ち着かない。
大奥から帰ってきたら、出迎えてあげないと。
「家光様だって、大奥行ったらすぐには帰って来ないだろ?」
今日は、普通の村娘のように、朝顔の描かれた着物を着ている。赤は紺の着物だ。
でも、その下にはいつでも戦えるように、忍び装束を身につけてる。
「あたしがいないと、家光が不安がる」
いつも、「才氷ーっ!」って、事ある度に泣きついてくるんだから。