『忍姫恋絵巻』
それから、2人で露店を回ったりして過ごした。
そして、ある露店の前で足を止める。
「かんざし……」
白いかんざしに、桜の飾りがついている。
桜。
桜は、あたしの中で特別な意味がある。
単に、あの人の家紋だった事もあるけど、なにより、儚く散るあの人を思い出すから。
「何だ?ソレが気になるのか?」
「っ、どうせ、あたしがかんざしなんて、似合わないって言いたいんでしょ」
馬鹿にするなら勝手にして。
忍びには、おしゃれなんていらないんだし。
思わずムッとする。
「いや、才氷は女だろ?着飾ったって良いと思うぞ。というか、見たい」
「は、はぁ!?」
予想外の返答に、あたしは口をポカーンと開けて、赤を見た。すると、赤はそんなあたしを見て笑う。