『忍姫恋絵巻』
あたしは、家光みたいに、綺麗な心もなければ、血を知らない純潔でも無い。
あたしは、家光と同じにはなれないって…。
「どんな形であれ、みんな同じように闇を持ってる。それに、こんな世だ、刀をとった時点で、殺された相手も、覚悟してるはずだ」
「でも……」
「そんな覚悟もない奴は、刀をもつ資格は無いな」
そっか……。
赤は、あたしの生き方を肯定してくれてる。
血に染まり、誰かを殺めても、この手が刀を手放せなくても…。
「そっか、あたしは今のままでもいいんだ…」
スッと胸の中に温かいモノが落ちてきたような気がした。
誰かに、ずっとあたしを受け止めてほしかったのかもしれない。
「そういう事。ほら、かんざし選べば?」
そう言って、赤はかんざしをあたしの手に握らせる。
それは、あたしが見ていた桜のかんざしだった。
「これ……」
「才氷、こればっか見てたからな」
赤…。
本当に、鋭い男だ。
でも、あたしの事を見ていてくれたんだ。