『忍姫恋絵巻』
「そのかんざし、外すなよ?」
「そんな、無茶な……」
「狐の面は、持ってきてるのにか?」
そ、それは仕事に必要ならモノだからで。
持ってくるのが当たり前なの!!
「う、うるさい!!分かったから、もう行くぞ!」
一歩も引かない赤に、あたしの心が先に折れた。
ここは、もうあたしの負けでいーわ。
「それなら、許す!」
「何で、上から目線なんだよ!」
そんな言い合いをしながら、あたし達は城へと帰る道を歩く。
椿のかんざし……。
そういえば、礼言えなかったな。
そんな事を考えながら、城に着くまで、赤の手の温もりを感じていた。