『忍姫恋絵巻』
④消せない憎しみと癒える熱の巻
この城へ来て、早くも1ヶ月が経った。
今日は、城から少し離れた川原で、灯籠流しを見物する事になっている。
公の場には、家光本人が参加する事になっている。
あたしは、狐の面を被って、赤と一緒に家光の護衛についた。
「灯籠、本当に綺麗ね……」
家光は、闇夜に淡く灯された灯籠を見送りながら、そっと呟いた。
「灯籠は、人の魂を天へと送る儀式だからな、余計にそう思うのだろう」
春日局様も、灯籠を見つめながら、静かにそう言った。
魂を、天に…。
あの人は、迷わずに天へと昇れたのかな。
弔う事も出来ず、今もさ迷ってはいない?
「才氷、どうかしたか?」
そんな事を考えていると、赤はあたしを心配そうに見つめた。
不思議、仮面被ってるのに、赤にはあたしの表情が見えてるの??