『忍姫恋絵巻』
「家光、大丈夫。あたしは、強いんですよ」
「でもっ……」
「信じてください、家光」
あたしは、家光の額に自分の額をコツンと合わせた。
あたしが帰らなきゃ、きっと泣いてしまうから。
必ず、この人の所へ帰ってこよう。
そう、心に決めた。
「才氷っ……」
「きっと、家光の所へ帰ります」
あたしは少しだけ面をずらして、笑顔を見せた。
「っ…分かった。才氷、赤、必ず帰ってきて!」
家光も何かを決意したように、あたしからそっと手を離す。
「もちろんですよ、家光様」
「また、後で会いましょう」
赤とあたしはそう行って、すぐさま城へと向かった。
「必ず、帰ってきて……」
その場を離れる瞬間、家光の、呟きを聞いた気がした。