『忍姫恋絵巻』


「長く、苦しんで消えて」

「う……ぁ……」


あたしは、憎しみに染まってしまったんだろうな。


呻いている忍びに背を向けて、城の中を進む。


もう、戻れないほどに残酷な、鬼へとなってしまったのかもしれない。


「天守閣………」


城で最も高い天守閣へ来る。
この燃える城が、桜牙門の城と重なって見えた。


家光、悲しむかな…。
帰る家を無くしてしまって……。


ホーウッ


そんな事を考えていると、雷鳴の鳴き声が聞こえた。
あたしは、天守閣から、屋根の上へと上がる。


「雷鳴、見つけた?」

ホーウッ!!


すると、雷鳴は、城の裏手の所でクルクルと回り始める。













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