『忍姫恋絵巻』


「あそこね……」


酷く、心が冷めていた。
今なら、人を殺す事に迷いも浮かばないかもしれない。


「信秋、絶対に許さないから」


また、あたしの大切なモノを奪おうとする。
懲りずに、何度も何度も…。


逃がしたりなんてしない。
誰一人として、織田の一族、忍びも全て!!



「凍てつく、精錬の造形……」


冷気が、上空に集まり、雲が物凄い早さで流れていく。そして、まるで真冬のような寒さを生んだ。


「氷時雨(ひょう しぐれ)!!」


あたしの一言で、空から氷の雨が降ってくる。


ビュンッ、ビュンッ!!


「うがぁぁっ!!」

「うぁぁぁっ」


沢山織田家の忍び達の悲鳴がこだました。

織田家以外には当たらないように、城の裏手にだけ氷の豪雨が降る。



「な、なんだ!?」


赤は空へ逃げ、術を出したあたしの所へと飛んでくる。


「おい、才氷!!」


赤が驚いたようにあたしの前に立った。


「城が燃える…また、あの人が苦しむ…」

「おい才氷、しっかりしろ!!」


赤は、あたしの肩を掴み、呼び掛けてくる。





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