『忍姫恋絵巻』
「ぜぇ、ぜぇっ……」
あたしは、赤を放り投げた手を擦る。
ちょっとは反省してよ!!
口づけの意味も、何も言ってこないし!!
「う………お……。い…痛ぇ…」
赤は頭を押さえてうずくまった。
「才氷!どうしたの!?赤に何かされた!?」
すると、いつからいたのか、家光があたしに駆け寄ってきた。
家光!?
やだ、全然気づかなかった。
気を抜きすぎだ、しっかり引き締めないと。
あたしは、家光の護衛なんだから。
「家光、あいつには近づいては駄目です」
あたしはそう言って、家光の背中を押して赤から遠ざける。
「………なんだよ才氷!身に覚えが無いぞ!?」
赤は頭をさすって立ち上がった。
身に覚えがない??
まさか、あれはなかったことにするつもり??
「…ほう………身に覚えが無い…ね」
ぜったいぶっ飛ばす!!
あたしはゆらゆらと、赤に歩み寄る。
「氷付けにする」
「え、才氷??ちょ、待っ……うがぁーっ!?」
あたしが不気味に笑うと、部屋には赤の悲鳴が響き渡った。