『忍姫恋絵巻』
「家光に…なんてふしだらな事を」
あたしは春日局の前に仁王立ちする。
「きょうの大奥は、あたしが行きます。露草だかなんだか知らないですが、そんな奴、家光にふさわしくありません」
とりあえず、一発氷付けにでもしようか。
「ほう、それは良い案だ。私は、大奥に行ってさえくれれば、どうでもいいからな」
春日局はニヤリと笑う。
「策士よ、本当に。才氷の前で、わざと話したんですね?怯える家光を見れば、才氷は断らない」
「なんの事だか、分かりかねるな」
赤と春日局が何か話していたけど、それを無視して、あたしは家光の前に座った。
「交渉成立しました」
「え……?」
家光はあたしを見つめて目を見開く。
「あたしが、大奥に行って、悪者を退治してきますから、安心して下さい」
「っ、才氷~っ!!」
家光は、泣きながらあたしに抱きついた。
ぜったい許さない。
うん、やっぱり氷付けにして、そのまま城門にでも飾っとこう。
怒りをフツフツを沸かせながら、あたしは家光を抱き締めた。