『忍姫恋絵巻』
「上様のおなーりー」
シャラン…シャラン
鈴が鳴らされ、重い着物を引きずりながら、影武者の家光として大奥へ入る。
男達がいっせいに頭を下げ、その中央をゆっくりと歩いていく。
うわぁ、なんか怖い。
頭を下げられるのに慣れてないからか、居心地が悪い。
でも、露草っていう正室候補を追い出すためだし、頑張らないと。
「おい、そろそろ露草を指名する頃だ」
すると、後ろから赤が声をかけてくる。
なぜか、赤まで大奥についてきたのだ。
「分かった。っていうか、何で赤まで来たの?」
「そんなの、才氷が心配だからだ」
「なっ、あたしは仕事はへましないから!」
あたしが、失敗するか、心配ってこと!?
失礼な!!
「違うって、はぁ、そう取るのか…」
苦笑いする赤に、首をかしげる。
何よ、はっきりしないなぁ…。
お互いに小声で会話しながら、大奥のもう一つの襖の前まで辿り着く。