『忍姫恋絵巻』
「切り裂け、暴発する乱気流…斬り風!!」
五右衛門一言で、身を切り裂く鋭い疾風が斬りかかったあたしを襲う。
まずい、すぐに氷の壁をっ!!
「凍てつく、精錬の造形、氷壁!!(ひょうへき)」
バァァーンッ!!
五右衛門の斬り風を氷の壁が受け止める。
そして、すぐに砕け散った。
その瞬間から、人影がこちらへ近づいてくる。
ガキーーンッ
五右衛門の攻撃をとっさに受け止める。
五右衛門の槍とあたしの懐刀がぶつかり合った。
まずい、室内で本気出しすぎた。
あー、部屋がボロボロに……。
ま、不可抗力だ。
「っと!!」
あたしは距離をとり、五右衛門の持つ槍を見つめた。
「その……槍……」
あの槍…見覚えがある、金の槍。
あの男…織田 信秋が金の甲冑を纏い、掲げた金の槍。
「…あぁ、これは信長様からお前に渡すように言われたんだよ」
五右衛門は、先ほどまでの口調とは変わり、砕けた口調に変わる。
そして、あたしに向かって槍を投げた。
ザシュッ!!
あたしの足元に、あの人の命を奪った槍が突き刺さる。
………在政様の命を奪った金の槍。