『忍姫恋絵巻』


「………在政様……」


あたしは、槍を握った。

この槍、あたしに贈って何がいいたい…。
そうか、これはあたしへの挑発??


また、あたしには何も守れない、そういいたいの?


槍を握る手に、力が入る。


「お前…服部の忍か」


五右衛門はあたしを見つめて、そう言った。


「だったら何」

「桜牙門の忍びだったそうだな」


五右衛門までもがこの事を知ってる。



服部の忍びは、徳川の忍びだけど、あたしは特例で桜牙門の忍びになったから…あたしの事は一部の人間しか知らないはず。


 
「なら、分かってるはず」


あたしの手から冷気が放たれ、槍はどんどん凍りついていく。


「織田は、あたしにとって敵。簡単には殺さないで、ジワジワと苦しめて、絶望させて……」


槍はついに、凍りつき、パリンッと砕けた。



「一人残らず消す」


あたしは、砕けた槍の破片を見つめて、呟いた。


「深い…憎悪だな」


五右衛門の言葉に、あたしは笑う。


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