『忍姫恋絵巻』
「…才氷か……次期当主ね。氷術は服部の秘術だからな」
五右衛門は扇子を開いて構える。
石川は、風の秘術を受け継いでる。
たぶん、力は互角だけど…。
「無駄………」
あたしはニヤリと笑い、五右衛門を見つめた。
「まだ始まってないだろ」
五右衛門は眉をひそめ、あたしを見やる。
あたしには、迷いなく殺す事が出来る。
少しも、同情なんてしないし、目的の為なら、手段は選ばない。
特に、あたしの主に関しては。
「凍てつく、精錬の造形…氷柱(ひばしら)」
氷の柱が五右衛門の周りを囲む。
「くそっ!!」
五右衛門が、風で柱を壊そうとするが、柱はびくともしない。
「氷輪(ひょうりん)」
柱を囲うような氷の輪が現れる。
そして、グルグルと回り、冷気を巻き起こす。
「連続して術を使えるのか!?」
五右衛門はあたしを見つめて目を見開いた。
「これで、最後……」
「く、そっ!!」
そして、最後の術式を発動しようとした瞬間。