『忍姫恋絵巻』
「お前が服部才氷か」
「っ!!」
突然、背後に人の気配を感じた。
そして、そのまま羽交い締めにされる。
嘘!?
いつの間にこんなに近くに!?
「ふぅ、助かったぜ、オッサン」
すると、五右衛門はその隙にあたしの術から逃げ出してしまう。
しまった!!
あと少しで、五右衛門を倒せたのに!!
「赤髪の忍びは、ここにはおらん。今ごろ、織田の忍にやられている所だろう」
振り返ると、40歳くらいの銀発の男が、そこにはいた。
「馬鹿言わないで、赤は簡単には倒せない」
赤は、ただの忍とは違って強い。
ぜったいに、死んだりしない!!
「信秋様が執着している女か。まだ子供じゃないか。3年前なら、14か…」
3年前……。
それは、あたしが桜牙門に仕えていた頃だ。
「…桜牙門の忍びが、服部の一族がなぜ徳川に仕えず桜牙門に仕えた?」
「それを聞いてどうするの」
桜牙門……。あたしは、桜牙門に仕えたわけじゃない。
桜牙門 在政に仕えたんだ。
在政様を守りたかったから。
桜の下、あの人と出会った時から、これは運命だと思った。
一瞬であの人に惹かれて、もしかしたら、恋に近かったのかもしれない。