『忍姫恋絵巻』



「……っ」



あの人を思い出す度、あの人を想う度、あの瞬間の、あの人が命を落とした時の事を思い出す。



思い出す度に色んな感情が溢れて、涙になって流れる。


「服部 才氷、徳川から手を引け」



男はあたしに言い聞かせるように語りかける。


「ふざけないで、そんなの無理」

「忍びもかつては同じ里をもち、生活していたという。それなのに、忍はバラバラになり、あげく戦の道具だ」


男は、愁うように、遠い目をしていた。


何……?
どうして、こんな顔をしてるの??
それに、この人からは殺気を感じない。


戦う気がないの??












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