【短編】春になったら


わたしは耳を疑った。


「…ちょ、っと待って。
わたし、佐倉先輩には会わなかったよ?」

「そりゃそーだろ。
幹にぃお前追い掛けてる途中に、倒れたんだから…。

幹にぃは、お前にだけは、倒れてでも噂が誤解だってことを知らせたかった。

昨日も…そうだった」


「……昨日…?」


「幹にぃは、ずっと休んでて、まだ体調が万全じゃないのに…
お前に一言『噂が誤解』だと伝えるために、無理して家を出て、来る途中に倒れて入院したんだ」



雨宮の話が終わる頃には

わたしは声を上げて泣いていた。



どうして


大好きな人を信じてあげられなかったんだろう。



待つことができなかったんだろう。





泣いても

泣いても



わたしの涙が枯れることはなかった。




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