【短編】春になったら
三年後…
わたしは、日本の大学を受験して
再び日本に帰ってきた。
「お帰り、春綺」
大学の前に咲き乱れる桜を眺めていると
優花がポンと背中を叩いた。
その後ろには、髪を短く切った雨宮もいた。
「ただ今。優花髪伸びたね」
「あんたもね」
わたしは、再び桜を見た。
そして、うんと背伸びをして
桜の花に、手を伸ばした。
二年前のあの日
こうしてたら
先輩と出会った。
こんなことしたって
先輩に会えるわけじゃないのに。
そう思っていると、背後から
細い腕が伸びてきて
花びらを採った。
そして、その花びらは、ちょこんとわたしの手のなかに収められた。
そう、こんな感じだったなぁ。
「はい。
これ欲しかったんだろ?」
え……?
この声……。
「先…輩……?」