【短編】春になったら
教室に入ると、もう既にHRが始まっていた。
「宮野!成瀬!お前ら入学早々遅刻か?」
担任の先生は、隣のクラスまで響くくらいの大声で言った。
「すいません。来るとき軽い目眩がして」
優花はいかにも体調が悪そうな表情を作って、言った。
「…あ…そうか。
後でちゃんと保健室行けよ」
先生は、そう言って教室を出ていった。
「優花が嘘ついてなかったら今頃説教だったね」
「ありがたく思いなよ」
わたしは、優花と話しながら、自分の席に着いた。
そして、生徒手帳の中に、桜の花びらを挿んだ。
「何それ、押し花?」
隣で見ていたクラスメートの男子が言ってきた。
「…まぁ…」
「へぇー、今時古風な女もいるんだな!!
宮野ってけっこう派手な外見なのに」
外見は関係ないじゃん…。
「……ハァ…」
わたしは、聞こえないように小さくため息を吐いて
隣で友達と盛り上がる、その男子を見た。
雨宮雄夏(アマミヤ ユウカ)
遊び人で有名なチャラ男くん。
あんたにだけは派手とか言われたくないっての。