【短編】春になったら
「春綺ちゃん…」
佐倉……先輩…。
苅田先生と、仲良く喋っていたのは
佐倉先輩だった。
「…噂…本当だったんですね…。
わたし……一人夢見て……馬鹿みたい」
あまりにも自分が惨めで
泣けてきた。
「さよなら」
「春綺…っ」
わたしは、泣きながら廊下を走った。
教室に戻ると
右手で頬を押さえる雨宮と
鞄を持ったままの優花がいた。
「春綺っ!!」
「…うっ…うぅ……優花ぁ!」
わたしは、優花に抱きついて泣いた。
「屋上行こ、春綺。
ここはもうすぐ人が来るし。
雨宮も。あんたにはちゃんと春綺に謝ってもらわないと」
優花は雨宮を睨んで、わたしの手を引いた。
「本当に…悪かった」
やっと泣き止んだわたしに
雨宮が頭を下げてきた。
「宮野が幹にぃばっか見てんのが悔しくて…つい意地悪言って…まさかまじでいるなんて思ってなかった」
バツが悪そうな雨宮の顔は
なぜか耳まで真っ赤に染まっていた。
昼休み
優花はわたしにこっそりと耳打ちをしてきた。