【短編】春になったら
「わたし、春綺が泣かされたのが悔しくて、雨宮にビンタしちゃったんだ。
雨宮は、あんたに本気だったんだよ」


優花は、少し切なげな顔で雨宮を見た。


「それで、初めてわかった」

「え?」

「わたし、雨宮が好き」


とつぜんの優花の激白に、わたしは何も言えなかった。


でも、小学校からずっと一緒の親友だ。

「そっか…!うん、応援するよ!
頑張って、優花!!」

「うん!!」



帰り際

校門の桜を見ると

目頭が熱くなった。


朝まで、あんなに鮮やかに見えていた薄ピンクの花びらが

今はとても哀しくて切ない色に見えた。





わたしは、桜吹雪に吹かれながら


一人

泣いて帰った。



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