【短編】春になったら
翌日も、その翌日も
ずっと、わたしは佐倉先輩に会うことはなかった。
気が付いたら
季節は変わり、もう夏休みが終わっていた。
体育祭が近づいたある日
「宮野!宮野っ!!」
雨宮が髪を振り乱して、息を切らしながら教室に飛び込んできた。
「あ…雨宮?どうしたの?
何かあった?」
「み、幹にぃ……幹にぃが入院したって」
「え…」
わたしは持っていた鞄を
床に落としてしまった。
「と…とりあえず場所変えよ?」
気を利かせた優花が、わたしの手を引いた。
「…雨宮、それどーゆいこと?」
屋上に来たわたしは、雨宮に聞いた。
「…幹にぃは、昔から体が弱くって、病院通いを続けてたんだ。
だから、学校来ても保健室に行くことが多かった。
そうしてたら、周りから噂流されたらしい。
噂は噂だったんだよ」
「それと、先輩の入院、何の関係があんのよ」
「……あの日…宮野が保健室に行ったときから、幹にぃはまた体調崩したんだ。
宮野を追い掛けて走ったから…」
「え?」