歪な塔の人
「久しぶり境本」

「…うん、おひさ」

雨音に閉ざされた図書室。
天気の悪さと相まって
来館者は零だ。
片付ける本もなくて
カウンターにぼーっと座る。

「ねぇ、」

「ん?」

「手首見せてよ」

「………今ここで?」

松本が唐突におかしなことを言い出した。

そして慣れた手つきで
私の左手首の包帯をほどく。

「おいお前」

「う〜ん、塞がりかけだね。これじゃかさぶたはがしても痛いだけだ」

「へん、たい」

「ごめんね」

松本がなよなよしく笑う。
眉を八の字にして
へにゃって感じに。
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