歪な塔の人
向かったのは、みんな大好き
廃ビルの屋上である。
ちなみにみんなに含まれるのは
俺と境本だけだから、
ごく狭い世界に生きてると思った。

そして寒い。
自転車をこいでるうちは、
自家発電よろしく熱くて
気にならないが、おりてしまうと寒い。

今にも雪の降りだしそうな
重たい空を見上げる。
テレパシーは電波障害で
届かなかったみたいだ。

仕方がないし、
ここまで来たのにすぐ帰るのは勿体ない。
とりま聞いた電話番号に
かけてみる。

暫くのコール音のあと、
普段より少し高い
知らない人みたいな声が聞こえてきた。

『もしもし?どちら様ですか?』

「どちら様でしょう」

『……誰だよ。切ってもいいかな』

「怒らないで境本俺だよ。」

『…え?えっ、松本か?なんで、なんで番号しってるんだ』

「ハッピーバレンタイン!!」

『会話してくれよ』
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