歪な塔の人
「君の電話番号はお友達特別価格でききだしたよ。」

『ストーカーかよ』

「君に会えないのがつまらなくって。せっかくバレンタインなら、お話くらいしてくれていいじゃないか」

『……今、家だから、5分待ってよ。あんまり家の中で電話できないから、かけ直す』

「可愛いことしてくれるんだね」

『うざい』

電話が切れて、再び手持ちぶさたになる。
階段まで戻って
壁を風避けにするが
ドアが壊れてるせいで
すきま風が容赦ない。

大人しく待つにしても
暇すぎるから脈でもはかる。

腕時計とにらめっこしながら。

「うぉっ」

スマホが震えて
画面に登録したばかりの
境本紫織子の名前が。

ぽちっとな。
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