歪な塔の人
「もしもし」

『亀よ』

「亀さんよ」

『のりのりかよ』

「君からの電話が嬉しいせいだね」

『最早今すぐきりたい』

そう言いつつも
ちゃんとかけ直してくれるところが
可愛くて仕方ない。

人間嫌いどこ行ったんだよって
突っ込みたい。

「外に出たの?車の音がする」

『そう。今、バス通りだから。声聞こえにくいかな』

「大丈夫だよ。境本の家はバス通り沿いなんだね。記憶したよ」

『だからストーカーかよ。』

「いやぁ、嬉しいな。休日に境本と会話してるよ。これは記念日樹立の予感だね」

『しないよ。いつにも増して気持ち悪いね、松本。』

「君の声が耳元できこえているせいだね…」

『………松本?』

「なに?」

『君いまどこにいるんだ?風の音がすごくて、聞こえにくいんだけど』

「…何処だと思う?」

『こっちが聞いてんだよ、バカ』

「さて今日はバレンタインだね、境本」

『会話してくれよ』

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