歪な塔の人
図書室の斜陽:2月第三木曜日

美しい猫の美しくない死に方

「…かもと?境本?」

「………何?」

名前を呼ばれていると
認識するまでに数秒かかって
松本の存在に気付く。

「今日は一段と顔が死んでるね。」

「出会い頭にそれかよ。もうちょっと、今日も可愛いねとかフェミニスト発揮しとけよ」
「いつも以上に心も荒んでるなー。なんかあったの?」

なんでこいつは
こういう時にずかずか
内面に踏み込んでこようと
するのだろう。
私の機嫌が悪いなと
思っても放っておけばいいのに。
触らぬ神に祟りなしと
いうくらいなんだから。

松本はこれっぽっちも悪くないのに
私の機嫌のせいでディスられてる。
かわいそうに。

冷静な私と、
些細なことに苛立つ私が、
二律背反にも存在していて
表で松本をなじる。

「君に話したってどうにもならないよ。結局、私に気に入られたい君の、下心にみちた自己満足で終わるでしょ」

「怒らないで境本」
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