歪な塔の人
初めて会ったときも
境本は貧血で苦しそうだった。

昼休みに裏庭の木陰に一人
読みかけの本を転がして倒れていた。

一瞬、通りすぎかけて引き返す。

「だ、いじょうぶですか…?」

「あ〜〜〜〜………うん、大丈夫」

倒れたままで一向に動かないから
首の後ろに手を回して抱えおこす。
外はこんなに暑いというのに
その時も境本の体は冷たいくらいだった。

どうしていいか分からないから
冷たい指先を手のひらで包んで温める。

「抱えられると思うけど保健室に運んだ方がいいかな」

「いい、お姫様だっこはパンツが見えるし、おんぶは密着度が高すぎる。どうせしばらくしたら治るよ。ほっといていい」

「さすがに地面にぽいは出来ないしな。治るまでいていいだろ」

「………新種の変態?抵抗の出来ないいたいけなおなごに何をする気」

「…うん、こういうタイプは初めてだな。見た目よりずっとはっきり物を言うんだな。あといたいけではない」

「失礼な」

それから二人して黙り込んで
握った手にやっと
体温らしきものが戻ってきたころ。

「今さらだけど、君だれ?」

「本当に今更だな。図書委員会で何度か顔みてるだろうに。一年二組の松本圭だよ。」

「へえ、初めて見たわ」

「そうか、じゃあ覚えてくれ。多分これからよく話しかけるから」

「なん…?」

「今日からお前に片想いするから」
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