【短編集】母親観察論
サザエさん
家でぼんやりしていた私。
掛かってくる一本の電話。
「もしも―――」
「柚鈴ちゃぁぁぁぁああぁぁぁぁんッ!!」
電話口から泣きそうな母の声。
私はため息をついてから、呆れ調子で切り返す。
「今度何やったの?」
「あのね、お財布忘れちゃったの。」
「・・・・・・。今どこ?」
「もうお仕事終わって、西友にいるんだけど・・・。」
なんで朝から今まで気づかなかった、母よ。
「わかったわかった。どこにあんの?」
「ママのもう一個の鞄の中ぁ。」
「で?届けるのはどこ?」
「レジ。」
嫌な予感。
「ママ、いつ気づいたわけ?財布がないこと。」
「んー?レジ通してからぁ。今もね、店員さん待たせてるの。」
早く言えぇぇぇぇえぇえぇぇぇッ!!!
というわけで、私はちょっと嫌味を。
「ったく。お魚くわえたドラネコでも追いかけてたわけ?」
「違うわよ!!」
急に怒り口調に母が変わる。
う、言い過ぎ?
っていうか、ドラネコが13階の我が家から魚くわえてくわけないしなぁ。
「ごめ―――」
「お財布忘れたのは街まで買い物に出かけた時よ!!」
そっちかよ。