全てをくれたあなたに

「上がったら部屋まで送り届けるわ。」




そう言って私に合わせてゆっくりと歩く夏希。





着いたお風呂場はとても広く、二人で使うにはもったいないくらいだった。





立って頭を洗う私を見た夏希は、





「やっぱり切った方がいいわね。
美容室に行く予定が立てられるまでは私が真白ちゃんの髪の毛洗ってあげるわね。」





と言って丁寧にトリートメントまでしてくれた。




体も洗い終わり、ちゃぷん、と湯船につかる。





石造りだが、滑らかに研磨された湯船では怪我をする心配なんて一切ないため、手を使ってスイーっと移動する。






「ふふっ、真白ちゃん楽しんでるわね。
いつも1人だったから真白ちゃんが来てくれて良かったわ。」





凛もいなくなっちゃったから寂しかったわ、と笑う夏希。





私は夏希の側まで移動すると今度は大人しく肩まで浸かった。





『私も、誰かとこんなふうに入るのはもちろん、ゆっくりお風呂に入るのも初めてだから嬉しい。』





夏希さんありがとう、と私は微笑んで、先程夏希に結んでもらった髪の毛を触った。




髪の毛がとても長いのでくるくるとねじってお団子にしてもらったが、カツラのような大きさになってしまっていた。




「やだ、嬉しいのはこっちよ?真白ちゃんがうちに来てくれて、むさくるしい中にも華が出来て明るくなったし。」
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