全てをくれたあなたに

夏希が用意した服、それはタオル生地の黒いショートパンツに黒い半袖パーカー。




そこまでは普通の部屋着だった。





だが、ショートパンツのお尻のところにはご丁寧にワイヤーの入った長い尻尾。


パーカーのフードには三角の尖った耳。


冷えるから、と渡されたルームシューズは真っ黒で、裏にはピンクの肉球。


同じく渡された手袋もルームシューズ同様で。





読んで分かる通り、私は黒猫になっていた。




はしゃぐ夏希はそのままの勢いで自分の部屋に私を連れていく。




「真白ちゃんにね、プレゼントがあるの!」





そう言って奥に入っていく。





しばらくして戻ってくると、夏希の腕の中には黒猫、ルナがいた。




『ルナ・・・!』





「凛が夕ご飯の前に届けてくれたの。
龍二が白猫しか連れていかなかったって。」





夏希はルナを私に渡す。




「みゃあ〜」




『ふふっ、くすぐったい。
ごめんね、ルナ。龍二が置いてって。』





スリスリと顔を寄せるルナの頭を撫でる。




カシャ、と音がしてその方を見ると、もう一度カシャ、という音がした。
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