全てをくれたあなたに

「何度も呼んだんだが、大丈夫か?
路地裏に入ってから俺にも声が聞こえて、そいつらはこの先にいるから銀司と冬樹を行かせた。
もう少しで戻ってくる。」





心配そうに私の顔を覗き込みながらそう説明する龍二。






『うん、ありがとう龍二。』






なんだか力が抜けたようでへらっと笑うと龍二も安心したように微笑んで私を抱き上げた。






するとちょうど銀司と冬樹も片付いたようで、銀司が女の人を抱き上げ、冬樹が気を失っている二人の男をずるずると引きずりながら出てきた。






女の人は小柄な少女で、裸足でボロを纏っていた。





男達に襲われて引き裂かれたボロの上に掛けられた銀司のブレザーはその小さな体をすっぽりと覆っていた。





『その人、どうするの?』





「今付けられた傷もあるから、凛の所へ連れていく。冬樹。」
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