全てをくれたあなたに
なぜこの時逃げようなんて思ったのかは分からない。
けれど、本能が何かに引き寄せられるように私の足は外へと向かっていた。
ここは1階。
どこかに窓はないかと探す。
すると階段の前に窓を見つけ、急いで開けて外に飛び出た。
着地が上手く行き、走り出そうとすると建物の中から「あいつが逃げた!」と怒鳴る声が聞こえた。
幸い私が飛び出したところは私の部屋の隣だったようで、すぐに道路から路地裏へと逃げ込んだ。
迷路のような路地裏を走り続けてどのくらいになるだろう。
いつからかご飯も食べず睡眠も取らずいつ死んでもおかしくない状態の私が走るにも限界があり、脚がもつれて転んでしまった。
『はぁっ、はぁっ、っ』
息も絶え絶えになりながら、近くのものを掴んでゆっくりと歩き出す。
3つくらい曲がり角を曲がると、
「みゃあ」
と小さな鳴き声が聞こえた。