全てをくれたあなたに
(猫?)
鳴き声が聞こえた方を見ると、黄色と深い青のオッドアイを持つ子どもの黒猫がいた。
その猫は私のところまで近寄ると、くるりと方向を変えて歩き出した。
気まぐれだったのだろう、と思っていると子猫は振り返り、みゃあと鳴いて座った。
ついて来いということだろうか。
ここがどこだか分からないので取り敢えずついて行ってみることにした。
子猫は角をうねうねと迷いなく曲がり、急に真っ直ぐになった道をしばらく歩き続けた。
そして1つ角を曲がると、見たことのあるような背の高い人影があった。
その人はあちらを向いていて、まだこちらには気づいていない。
「みゃお!」
子猫が一声鳴く。
その声に前を歩いていた人物が振り返り、慌てたように駆け寄ってきた。
誰なのか確認しようと顔をあげようとすると、突然ぐらりと視界が揺れて白く霞んでいった。
あ、倒れる。
と思ったがそんな衝撃はなく、ふわりと何か暖かいものに包まれたような気がした。
「おい、しっかりしろ!」
その言葉を遠くに聞きながら私は意識を手放した。