全てをくれたあなたに
目覚め
ぼやける視界。
徐々にクリアになり、周りを見る限り真っ白でレースカーテンの引かれた窓からは月明かりがレースの模様を浮かび上がらせている。
ここはどこだろうか?
口には不思議なマスクがされていて、左腕に針が刺さっていて管が繋がる上の袋から液体が垂れている。
ふと、右手にあるふわふわとしたものに目を向けると、路地裏であった子猫が丸まっていた。
さわさわと優しく撫でるとパチッと綺麗なオッドアイを開き、嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らして擦り寄ってきた。
くす、と思わずこぼれた笑みに自分でも驚きながら、左手に感じる温もりに目を向けた。
私の手を包み込む男の大きな手。
その人物は椅子に座ったまま俯いて寝息を立てている。
どうしようかと思い、取り敢えず手を離そうと大きな手からそっと引き抜いた。