全てをくれたあなたに
女性は私を見て優しく微笑み、私のマスクを外してベッドを少し起こした。
「良かったわ、目が覚めて。
あなた40度近い熱があったし2週間も目を覚まさなかったのよ?」
生きているのが不思議なくらい、いつ死んでもおかしくない状態だったわ、と、付け足す。
「痛い所はない?こんなに傷があって、辛かったでしょうに・・・」
『痛い?辛い・・・と言えば何となくですが。』
掠れて聞きづらい声で痛いって何ですか?と聞く私に2人は目を見開いた。
「どういう事だ?」
「分からないわ。ただこの傷とこの数・・・
随分前から痛みを感じなくなったんじゃないかしら。」
服をまくり上げ、傷の程度を確かめる女性が深刻な顔をして言う。
次に体温計を脇に挟み、下まぶたを下げ、口の中を診る。
「やっぱり重度の貧血と栄養不足ね。
顔色も悪いわ。・・・と、熱は下がったようね。」
ピピピッと丁度よく鳴った体温計を確かめて言う。
「心臓も異常なし。
・・・ねぇ、いつから寝てないの?それと食事も。」