全てをくれたあなたに
凛が出て行った後の静かな部屋で私と龍二はただ見つめ合っていた。
今までは薄暗いところばかりでしか顔を見ることが出来なかったので明るい所で龍二と会うのは初めてだ。
背が高くすらっとした体型にキリッとした二重、鼻筋の通った高い鼻、薄い唇がバランスよく配置された綺麗な顔立ちをしていた。
黒曜石のような瞳を吸い込まれるように見ていると、
「・・・ 真白。」
と、ずっと私を見ていた龍二がぽつりとつぶやくように言った。
『?』
「お前の名前は真白だ。真の白と書く。
名前が無いと何かと不便だろう?
記憶が戻るまででいい、それまでその名を使え。」
『ましろ・・・』
人形扱いをされてきた私につけられた新しい名前。
柔らかい響きのそれに今まで感じたことのない気持ちが込み上げる。
『あ、ありがとう・・・ございます。』
「あぁ。」
少し震えた声でお礼をいう私を龍二が優しく微笑んで見ていた事をうつむいていた私は知らなかった。