全てをくれたあなたに
「偵察ご苦労だったな。
変わった事はないか?」
『はい、様子としては今までと変わった事はありませんでした。
ただ一つ気になることが。』
「なんだ?」
俺は帰る直前に見た少女の話をした。
その話に親父と銀司は眉間にシワを寄せ、お袋は目に涙を浮かべて自分の手を握りしめていた。
「・・・龍二。」
『はい。』
「その子は、まだ正気か?
お前が今まで見てきた者達のように自分を見失っていないか?」
相手の組への怒りを抑えながらも、声には怒気が感じられる。
『あの少女は自分を見失ってはいません。
しかし、瞳は闇に染まり、人間が持つはずの感情が欠落し、自分の生きる意味を見失っています。』
俺は少女から感じたことをありのままに話す。