全てをくれたあなたに
『・・・凛。』
「冗談よ、そんなに怒らないで。」
ふふっと笑いながら白衣を脱ぐ凛。
凛が椅子に腰掛けたのを見て銀司が離れて椅子に座る。
『で、どうだった。』
俺の問いに悲しそうに眉を下げる凛。
「酷いの一言に尽きるわ。
全身アザだらけで、肋骨も何本か折れてたわ。枷で出来た擦り傷も治るまでには時間がかかるわね。」
でも、と続ける。
「外傷も充分酷かったけれど、一番酷いのは人間が生きるために必要なものが死んでもおかしくないくらい足りていないことよ。」
震える声で辛そうに言う凛。
『それは・・・どういう事だ。』
「重度の栄養失調、貧血、睡眠不足よ。
体の痩せ方も異常よ?
臓器までもが痩せてしまっていて・・・体重が25kgしかなくて。
あの子は小さいわ。けれど、あの大きさの子なんて探せばいくらでもいる。
本当に、生きているのが不思議なのよ・・・」
凛自身もその異様な姿に混乱しているのだろう。
隣に座っていた銀司が凛の横に移動して背中をさすっていた。