全てをくれたあなたに
そんな少女に柄にもなく見とれていた俺の横腹を軽くつついて中に入る凛。
俺ははっとして凛の横に腰掛けた。
凛は寝起きでボケっとしている少女に簡潔に状態を説明する。
記憶がなく、名前が分からないという少女。
人形と呼ばれていた、と聞いた時には俺も衝撃を受けると共に激しい怒りを覚えた。
そんな俺を見て、凛は出ていく間際に名前を付けてあげなさい、と耳打ちをした。
名前・・・。
目を逸らすことなくじっと俺を見つめる少女。
その瞳は闇による陰りが渦巻くものの、邪心の無い真っ直ぐな目に俺は[真白]という名前を付けた。
「ましろ・・・」
名前を与えてから噛み締めるようにつぶやく真白。