全てをくれたあなたに
―――ろ、・・・し、ろ
『ん、』
遠くから声が聞こえて意識が浮上する。
「真白」
龍二の落ち着いたバリトンの声。
『・・・りゅう、じ?』
うっすらと目を開けると私の顔をのぞき込む龍二の整った顔があった。
「あぁ。もうすぐ夕飯だから起こした。
夕飯だけは組員全員で食堂で食べるから食堂に行くぞ。」
『ん・・・』
目が覚めきらず、まだうとうととする私をふっと笑って抱き上げると、いつもはお姫様抱っこなのに今日は曲げた右腕に私をのせた。
『わ、』
突然の揺れにおどろいて目が覚める。
落ちないようにがっちりと固定されてはいるが、私は怖くて龍二の肩に掴まった。
龍二はそのまま部屋を出て食堂に向かった。
途中、何人かの組員さんとすれ違い、皆不思議総な目でこちらを見ていた。
もちろん元気な挨拶は忘れなかったが。
角を一つ曲がると、夏希が来た。
「あら、龍二。あなたお父さんみたいよ?」
小さい子のように抱っこされている私を見て驚いた顔をしたものの、からかうようにそう言った。