無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
仕方がない。
どんなに短くても返事をもらえただけでも良しとしよう。
とにかく無事?なことは確認できたのだから。
そう気持ちを持ち直して、スマートフォンをエプロンのポケットにしまったユキは足早に長い廊下を進んだ。
ユキは青木家のメイドである。
コンコン
「失礼します」
ユキが駆け付けた部屋は、この屋敷のお嬢さま、青木真優の部屋だ。
真優お嬢さまの部屋は広い。
プライベートリビングの奥から「こっち」と声がして、ユキが行ってみると、
クローゼットの前で腕を組み困ってしまったというように溜め息をつく真優がいた。
「どうなさいました?」
「うん―― あのね…」
真優が差し出した一枚の紙には、パーティのスケジュールがビッシリ書いてある。
「あらまぁ大変!
すぐにドレスの準備をしなくちゃいけませんね!」
「うん…
でもドレスは遥人が用意してくれるからいいんだけど…」
恥ずかしそうに視線を逸らした真優は、今から婚約者の桐谷遥人とドレスを買いにいくのだという。
そしてそのデートに何を着たらいいかとユキ聞いて、ポリポリと頭を掻きながらキュッと下唇を噛んだ。
「わかんない……何を着たらいいの?」
クスッ
わが親愛なるお嬢さまは、本当に可愛い娘だ。