無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

―― 宙さんとデート……


 宙が指定してきた場所は、青木家からそう遠くはない地下鉄駅の近くのカフェだった。



 デートなんて、何年ぶりだろう……



 胸をときめかせてカフェに向かうと、店内の小さなテーブル席に一人で座り、雑誌を広げている宙が見えた。


 今日は特に寒いせいか宙は、ダウンジャケットを着ているようだ。


 家に帰って着替えてきたのだろう…… そう思って宙を見ながら歩いていくと




 ユキに気がついた宙が、片手をあげてニッコリと微笑んだ。



 宙に向かって手を振り返す自分が、どれほど羨ましそうな視線を女の子たちから向けられているのか、

 宙以外はまったく目に入っていないユキは気づいていなかった。




「おまたせ……」


 向かいの席に座って宙を見た。

 昼の明るさの中で見る彼は、昨夜の彼よりも更に爽やかに見えた。
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